オリジナル創作プロジェクト『hobby-pj(ホビプロ)』WEBサイト

第1話 拝啓この旅の行き先へ。【カタルシスレコード】-part4

公開日:2017年06月07日

最終更新日:2017年08月25日

2017年08月25日、ページ最後の話数の表記を修正しました。

拝啓この旅の行き先へ。part3に戻る


外を見る。
全然見覚えのない風景だ。
今はどこを走っているのだろう。
地理感がないから、よくわからなかった。

「あ、見てみて弥生、山が見えるよ」
「雪が残ってるね。とっても綺麗」
「あれなんて山かな?」
「え? 富士山でしょ?」
「へえ、あれが。初めて見た」

私は驚いてアリスを見た。
日本を象徴する山を知らないなんて、一体どれほど世間知らずなのか。
確かに彼女は自分の興味のあること以外は知ろうともせず、いろんなことに無知ではあったけれど、まさか富士山まで知らないとは。

「一般常識だよ」
「でも、山の名前なんて興味ないもん」
「興味なくてもこれくらいのことは知ってないと、この先苦労するよ?」
「はぁい」

やる気のなさそうな返事。
この子はいつもそうだ。
変わってる人。それが彼女に対する第一印象だったし、今でも変わらずそう思っている。

「それより、楽しい話をしましょうか」
「それよりって……。富士山くらいちゃんと覚えておいてよね。まぁとりあえず、引っ越し先の部屋がある程度片付いたら周囲を散策しようね」
「近くに安いスーパーがあるところを選んだから、まずはそこに行ってみましょう」
「うん、それと大型の本屋さんもあるみたいだからそこにも!」
「なにかいい専門書とか売ってるといいなぁ」
「あ、家具とか食器とかも見なきゃ!」
「そうだった。本棚とか現地調達なんだった。それは早くしないと……」
「テレビとか!」
「今時テレビなんているの? ほとんど見てる人いないのに?」
「ゲームがしたいからね! スーパーで野菜買って、自炊したいなぁ……」
「私も。近くにあった野菜の売ってるスーパー潰れちゃって、簡易食ばーっかり食べてたから、飽きちゃった」

尽きない話題に、アリスは新聞を畳んで膝の上に置いたまま、ずっと二人で話していた。

作:雨崎涼葉

第2話(作:弓月キリ)に続く

第1話 拝啓この旅の行き先へ。(ページリスト)に戻る

【カタルシス・レコード】概要に戻る


TOP