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第1話 拝啓この旅の行き先へ。【カタルシスレコード】-part3

公開日:2017年06月07日

最終更新日:2017年07月02日

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今でも鮮明に思い出せる。
あれは、私が廃墟巡りが好きだと話したときのことだった。

――私も行ってみたいな。

アリスはそう言った。自分の好きなものに興味を持ってもらえて嬉しくない人間などいるだろうか。
私はすぐに場所や日時を決めて、一緒に行くことを約束した。
その日を楽しみにして、毎日眠りについていた。

当日、朝早くに家を出て、長時間電車に揺られて予定の場所へと向かう。
太陽が真上に昇る時刻。
そこは結構有名なところで、軍事工場だった。

覚えている。確か、人はいなかった。
そこは割と有名なところで、以前来たときはまばらにだが、人がいた。
しかし、その日はいなかった。

日当たりもよく、光りと陰のコントラストが虚無感を醸し出していて、とても美しかった。
アリスも「きれいなところだね」と言っていた。

そのまま私たちは進んで行って、奥の部屋に差し掛かった。
私が最初に入って行って、アリスが後に続いて部屋へと足を踏み入れた。
そこは屋根が崩れて地面に転がっていて、ほとんど外と変わりないような空間だった。
アリスがおぼつかない足取りで、部屋の壁側へと進んで行った。

――ふらふらしてたら危ないよ。足元注意してね。

そんなことを言ったような気がする。アリスには、聞こえていないようだったけれど。
彼女は壁に右手をついて、外や壁をキョロキョロと眺めだしたかと思ったら、急にこちらに振り向いて、言った。

――これかも。私が探していたのは。

その後、アリスは興奮した様子で中を見て、夕日が沈む前に電車に乗って、家へと帰った。
彼女はそのとき文転を決意したようで、3年生に進級したときには同じクラスになった。
理系のクラスに進学するはずだったのに。
後から知ったことなのだが、担任の教師もとても驚き、何度もアリスと話をしたそうだ。
しかし、彼女の意思は固く、結局私と同じ道を歩むことになった。



窓の外を見る。やはりまだ暗い。

――トンネル長いね。
――そうだね。

アリスに言うと、簡単な同意の言葉が返ってきた。
そして彼女は再び新聞を眺める。

「私、長生きがしたいの」
「どれくらい?」
「私の探していることが見つかるくらい」
「探していることって?」
「わからない」
「……そう」

急に、外から光が差してきた。
――眩しい。
私は目を閉じない程度に瞼をおろし、無意識に眉間にしわを寄せた。
アリス側に太陽があるため、アリスは全然眩しくなさそうな、涼しげな顔でくすくすと笑っていた。
そうして、彼女は私のためにカーテンを下した。

「ありがとう」
「いいえ。今日は良い天気ね」
「ほんと、絶好のお引越し日和だね」
「新しいところお散歩するにはいいかもね」
「でも今日は朝から疲れたから、引っ越し作業に集中したいな」
「あら、嫌味ったらしい」

私たちは同時に笑った。

拝啓この旅の行き先へ。part4に続く


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