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第1話 拝啓この旅の行き先へ。【カタルシスレコード】-part2

公開日:2017年06月07日

最終更新日:2017年06月13日

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段々と腹が立ってきたのか、弥生の口角はどんどん下がっていき、ついにはアリスから新聞を奪い取った。
手に持っていた新聞が突然消えたことに驚いたのか、アリスは目をぱちくりとさせて、弥生を見た。


「え、何するの?」
「暇!」
「そう言われても。何か本でも読んでいれば?」
「本なんて、持ってきてないよ」
「じゃあケータイでもいじっていたら?」
「もう!」


じれったそうに苛立った顔をする弥生を見て、アリスは笑った。
弥生から新聞を取り返し、自身が読んでいた記事が見えやすいように畳んで、弥生に見せる。


「ほら見て、これ!」
「え、何……? ”人間が不死に到達する時代がきた”? なにこれ。低俗なオカルト誌みたいね」
「いいから、先を読んでみて」
「えーっと、”DNA末端に存在する塩基配列の反復構造であるテロメアは細胞分裂のたびに短くなっていき、一定以下になると細胞が分裂しなくなり、細胞死を迎える。これが老化の原因である。しかしこのテロメアを伸長する酵素があり、これをテロメラーゼという。このテロメラーゼは人間は不活性であるが、ガン細胞はこれが活性化されており、細胞を不死にする。このガン細胞を用いることで短くなったテロメアを伸長し、不死を目指す研究が長年行われてきたが、今年2月に米国の大学の研究所でラットでの実験で初めての成功が認められ、これから臨床実験に向かうための準備が……” わからないからもういいよ」
「もういいって、興味ないの? 人間が不死になれるかもしれないのよ? 不死になりたくないの?」
「アホらしい……」


アリスは夢見がちな性格だった。
本が好きで、高校生の頃は毎週色んなジャンルの本を図書館で借りては読みふけっていた。

アリスは、理系クラスに所属していた。
生物化学が好きで、理系の科目はいつも学年1位だったのを覚えている。
生物系の大学に進み、そこから知識を広げていって分野を決めて、研究者になるのが夢だと、いつか弥生に語っていた。

しかし、彼女は今、弥生と同じ歴史学科に通うために同じ電車に乗っている。

おかしい。
弥生は最初そう思った。
あんなに生物の勉強が好きだったのに。
あんなに夢を語っていたのに。
今だって、こんなによくわからない理科系の話を嬉々としてしているのに。

拝啓この旅の行き先へ。part3に続く


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